その分、意図しない操作をしてしまうリスクもあります。業務で使うときは、まず手順が決まった1つの業務から始め、AIに渡す権限を必要な範囲に絞り、重要な操作の前には人が確認する。この3つを最初に決めておくのが安全です。
1. AIエージェントとは
AIエージェントとは、特定の目標を達成するために、周りの状況を把握しながら、自律的に行動するAIのシステムです。総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」は、AIエージェントを「特定の目標を達成するために、環境を感知し自律的に行動するAIシステム」と定義しています。総務省の令和8年版情報通信白書も、「人の介入なしに特定のタスクを自律的に実行するAIシステム」と説明しています。
身近なたとえで言えば、チャットAIが「質問すると答えてくれる相談相手」なら、AIエージェントは「目的を伝えると、段取りを考えて作業まで進めてくれる担当者」です。例えば「来週の出張の宿を探して」と頼んだとき、チャットAIは候補を挙げて終わりますが、AIエージェントは候補を調べて比べ、条件に合う宿の予約手続きまで進めることができます。
ただし、このたとえには限界があります。AIエージェントは人と違って、仕事の背景や会社の事情を自然に理解しているわけではありません。何を任せ、何を任せないかを、人が決めて伝える必要があります。
定義:総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」本編第1部の用語定義(p.11)。総務省「令和8年版情報通信白書」p.116の注。
2. チャットAIとの違い
ChatGPTやClaude、Geminiなどを、質問や文章作成の相手として使う場合は「チャットAI」としての使い方です。同じサービスでも、ファイルを操作したり、ほかのシステムとつないで作業を進めたりする機能を使うと、AIエージェントとしての使い方になります。
OpenAIは、AIエージェントを作るための公式ガイドで、エージェントを「ユーザーに代わって自律的にタスクを完了するシステム」とし、単純なチャットボットはエージェントではないと説明しています。Google Cloudも、AIエージェントを「ユーザーに代わって目標を追い、タスクを完了する」ソフトウェアシステムとしています。
OpenAI「A practical guide to building agents」。Google Cloud「What are AI agents?」。
3. 「ワークフロー」と「エージェント」は違う
AIを業務に組み込むとき、すべてをAIエージェントにする必要はありません。Anthropicは公式の技術解説で、あらかじめ決めた手順の中でAIを使う仕組みを「ワークフロー」、AIが自分で手順を決めて進める仕組みを「エージェント」と区別し、まずは最も単純な方法から始めることをすすめています。
例えば「届いた請求書から金額と日付を読み取り、会計ソフトの入力欄に下書きする」という業務は、手順が毎回同じです。この場合は、決まった手順の中でAIを使うワークフローで十分なことが多く、動きも予測しやすくなります。一方、「問い合わせの内容に応じて、調べる資料や返答の方法を変える」ような業務では、AIが自分で手順を選ぶエージェントの仕組みが役立ちます。
自由度が高いほど便利になりますが、そのぶん動きを予測しにくくなります。業務に合わせて、どこまでAIに判断させるかを選ぶことが大切です。
Anthropic「Building effective agents」(2024年12月公開)。
4. 業務でAIエージェントに任せやすいこと
次のような、手順がある程度決まっていて、結果を人が確認しやすい作業は、AIエージェントに任せやすい仕事です。以下は説明のための例で、すべての環境で同じように動くことを示すものではありません。
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調べものと比較表づくり
複数の資料やWebページを調べ、条件ごとに比較表にまとめる。最終的な判断は人が行います。
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書類からの読み取りと入力の下書き
請求書や申込書から必要な項目を読み取り、システムに入力する前の下書きを作る。
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問い合わせへの返答の下書き
社内の資料をもとに、問い合わせへの返答案を作る。送信は担当者が確認してから行います。
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小さな業務ツールの試作
Claude CodeやCodexなどのAIエージェントを使い、日報や問い合わせ管理などの簡単なツールを試作する。
5. 任せてはいけないこと・注意すべきリスク
AIエージェントは「作業ができる」ぶん、チャットAIより注意すべき点が増えます。AI事業者ガイドラインの別添は、AIエージェントについて「人間の意図しない商品の注文やファイル削除等」を行う可能性があると指摘しています。また、外部のシステムとの連携が増えるほど、攻撃を受ける範囲が広がるとしています。
IPA(情報処理推進機構)は、「情報セキュリティ10大脅威 2026」の解説書で、AIが作業の途中で読み込んだ資料やWebページに不正な指示が紛れ込む「間接プロンプトインジェクション」という攻撃を紹介しています。そのうえで、AIが不正な指示を見分ける技術的な対策で「完璧なもの」はまだ知られていないとしています。
こうした点から、次のような作業は、AIエージェントに最後まで任せず、人が判断する形にしておくのが安全です。
- お金が動く操作:振込、発注、支払いの確定
- 取り消しが難しい操作:データやファイルの削除、本番システムの設定変更
- 社外への送信:お客様へのメール送信、公開ページへの掲載
- 機密情報の扱い:顧客の個人情報や未公開情報を、外部のサービスに渡す操作
対策の基本は3つです。AI事業者ガイドラインの別添が示すように、AIやシステムに渡す権限を業務に必要な最小限に絞ること。本編が示すように、適切な場面で人間の判断を介在させること。そしてIPAが挙げるように、決裁や承認を複数の人で確認する決まりにしておくことです。
AIに任せる仕事と人が判断する仕事の分け方はヒューマン・イン・ザ・ループとは?、AIが事実と異なる内容を出力する問題はハルシネーションとは?、AIエージェントに全社共通のルールを読み込ませる方法はAGENTS.mdは社内AI活用の「憲法」で詳しく解説しています。
リスクの記述:「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」別添p.19、権限の最小化はp.146。人間の判断の介在:同本編。間接プロンプトインジェクションと複数名による確認:IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026[組織編]解説書」。
6. 日本企業の状況
AIエージェントの利用率を示す公的な統計は、2026年11月時点で見当たりませんでした。参考になるのは、総務省の令和8年版情報通信白書にある、生成AIによる業務変革のための環境整備についての調査です。「社員が生成AIを活用したアプリやAIエージェントを開発可能な技術環境にある」と答えた企業の割合は、次のとおりでした。
日本は15.3%で、米国(22.1%)、ドイツ(27.4%)、中国(31.1%)を下回り、日本の中小企業は11.4%でした。これは「AIエージェントを使っている割合」ではなく、「社員が開発できる環境がある」と答えた割合です。それでも、AIエージェントを業務に取り入れる準備は、日本、特に中小企業ではまだこれからの段階にあると考えられます。
出典:総務省「令和8年版情報通信白書」図表Ⅰ-2-1-5(2026年1〜2月、従業員10名以上の企業の管理職以上へのインターネット調査。日本の有効回答515)。設問の母数は白書本文で明示されていないため、割合は参考値として扱ってください。
7. 中小企業がAIエージェントを始めるときの4ステップ
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任せたい業務を1つ選ぶ
件数が多く、手順がある程度決まっていて、結果を人が確認しやすい業務から選びます。
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ワークフローで足りるかを考える
手順が毎回同じなら、AIに自由に判断させる必要はありません。単純な仕組みのほうが、動きを予測しやすくなります。
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権限と確認の手順を決める
AIが触れてよいデータとシステムを絞り、お金や社外への送信が関わる操作の前には人が確認する手順を決めます。
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小さく試して、効果を測る
試す前の作業時間を記録しておき、試した後と比べます。効果と課題を確かめてから、範囲を広げます。
費用の考え方は来年度のAI予算の立て方で、効果の測り方はAI満足度「7割」をどう読む?で解説しています。
8. よくある質問
Q. AIエージェントと生成AIは何が違いますか?
生成AIは、文章や画像などを作り出すAIの技術全般を指します。AIエージェントは、生成AIなどを使いながら、特定の目標に向けて自分で手順を考え、ツールを使って作業を進めるシステムです。AIエージェントの多くは、中心に生成AIを使っています。
Q. ChatGPTはAIエージェントですか?
質問に答えたり文章を作ったりする使い方は、チャットAIとしての使い方です。同じサービスでも、ほかのツールやシステムを操作して作業を進める機能を使う場合は、AIエージェントとしての使い方になります。OpenAIも、単純なチャットボットはエージェントではないと説明しています。
Q. AIエージェントを使うときに、まず決めておくことは何ですか?
任せる業務の範囲、AIに渡す権限、人が確認する場面の3つです。AI事業者ガイドラインは、AIエージェントが人間の意図しない注文やファイル削除などを行う可能性を指摘しています。お金が動く操作や社外への送信は、人が確認してから行う形にしておくのが安全です。
9. 参考資料と制作について
- 総務省・経済産業省:AI事業者ガイドライン(第1.2版)本編公表:2026年3月31日/参照日:2026年11月7日。AIエージェントの定義(p.11)、人間の判断の介在。
- 総務省・経済産業省:AI事業者ガイドライン(第1.2版)別添公表:2026年3月31日/参照日:2026年11月7日。AIエージェントのリスク(p.19)、権限の最小化(p.146)。
- 総務省:令和8年版情報通信白書参照日:2026年11月7日。AIエージェントの説明(p.116注)、図表Ⅰ-2-1-5(環境整備の状況)。
- IPA:情報セキュリティ10大脅威 2026[組織編]解説書参照日:2026年11月7日。AIの利用をめぐるサイバーリスク、間接プロンプトインジェクション、複数名による確認。
- Anthropic:Building effective agents公開:2024年12月19日/参照日:2026年11月7日。ワークフローとエージェントの区別。
- OpenAI:A practical guide to building agents参照日:2026年11月7日。エージェントの定義、人による介入。
- Google Cloud:What are AI agents?参照日:2026年11月7日。AIエージェントの定義。
この記事を書いた人
名古屋大学発ベンチャー認定のAIスタートアップ。中小企業を中心に、業務特化型AIエージェントの開発やAI人材育成・内製化支援を展開。「4週間のスモールスタート(MVP開発)」と現場目線の伴走サポートを強みに、IT専門人材が不在の企業でもリスクを抑えたAI活用を実現します。
専門分野:AIエージェント開発 / 業務効率化 / AI人材育成・内製化研修
代表取締役:井上貴雅
公式サイト:株式会社MiToA 公式HP / お問い合わせ・ご相談はこちら
本記事は公開一次資料をもとに、AIによる調査・執筆補助を用いて作成しています。英語の資料は内容を要約して紹介しています。業務の例は説明用で、MiToAの顧客事例や効果を示すものではありません。図とグラフは確認した資料をもとに独自に作成したものです。写真風の画像はAIで生成したイメージで、実在の人物・企業・書類ではありません。大学による記事の監修・保証を示すものではありません。
情報確認日:2026年11月7日。訂正のご連絡はお問い合わせ窓口へお願いします。