AI活用ルール / 全社に浸透させる仕組み

AGENTS.mdは社内AI活用の「憲法」
ガイドラインを配って終わりにしない仕組みの作り方

AIの使い方を社員任せにせず、全社でそろえるには。AIエージェントが毎回読み込む共通ルール「AGENTS.md」の考え方と、定期的に更新して浸透させる運用を解説します。

制作・運営:株式会社MiToA
1枚のルール文書から、3人の利用者へ線が伸びている抽象的な図
説明用イメージ(独自作成の図):全社共通のルールを、一人ひとりのAI利用に届ける。
結論:AIの使い方は、ガイドラインを配るだけではそろいません。AIエージェント自身が毎回読み込む全社共通のルール「AGENTS.md」を用意し、定期的に更新することで、使い方を仕組みでそろえられます。

AGENTS.mdは、AIエージェントに作業の前提やルールを伝えるための、オープンな形式のファイルです。OpenAIのCodexやAnthropicのClaude Codeなど、複数のAIエージェントが読み込みに対応しています。社員がルールを覚えているかどうかに頼らず、AIが作業を始めるたびに同じルールを参照する状態をつくれる点が、紙やPDFのガイドラインとの大きな違いです。

1. AGENTS.mdとは何か

AGENTS.md(エージェンツ・エムディー)とは、AIエージェントに「この職場で作業するときの前提とルール」を伝えるためのテキストファイルです。公式サイトでは「エージェント向けのREADME(説明書)」と位置づけられ、Linux Foundation傘下のAgentic AI Foundationが管理するオープンな形式とされています。同サイトによると、6万以上のオープンソースプロジェクトで使われています。

書式は、見出しと箇条書きで書ける一般的なMarkdownです。特別なプログラミングの知識がなくても読み書きできます。公式サイトには、セットアップの手順、書き方のルール、テストの方法、変更を提出するときの約束事などを書く例が示されています。

対応するツールも広がっています。OpenAIは、CodexがAGENTS.mdを作業前に読み込み、利用者全体の設定、プロジェクト全体、個別のフォルダーの順に指示を重ねると説明しています。Anthropicも、Claude CodeがリポジトリのAGENTS.mdをプロジェクトの指示として読めると案内しています。

定義と運営主体:AGENTS.md公式サイト。Codexの読み込み順:OpenAI「Custom instructions with AGENTS.md」。Claude Codeの対応:Claude Code Docs「How Claude remembers your project」。

2. 社内AI活用の「憲法」にたとえると

全社共通のAGENTS.mdは、会社のAI活用における「憲法」のようなものです。国の憲法が基本的な方針を定め、その下に法律や条例があるように、全社のAGENTS.mdで基本方針を決め、部署やプロジェクトごとのファイルで細かなルールを足していきます。

全社共通のAGENTS.mdの下に、営業部と経理部のAGENTS.mdがあり、それぞれ日々の業務につながる階層図
説明用イメージ(独自作成の図):全社の基本方針の下に、部署ごとの細則を重ねる。

実際に、AGENTS.mdの公式サイトでは、作業中の場所に最も近いファイルが優先されると説明されています。Codexも、全体の指示を先に読み、作業するフォルダーに近い指示ほど後から重ねて読むため、近い指示が優先されるとしています。「全社の方針」と「部署の細則」を分けて書ける仕組みが、ツール側に用意されているということです。

ただし、たとえには限界があります。本物の憲法と違い、AGENTS.mdは上位のルールが常に勝つわけではありません。近いファイルの指示が後から重なるため、部署のファイルが全社の方針と食い違うと、部署の指示が採用されるおそれがあります。全社で必ず守る事項は、部署のファイルで上書きしない約束にし、技術的な制限が必要なものは後述の方法で別に守ります。

3. ガイドラインを配るだけでは浸透しない理由

IPA(情報処理推進機構)が2026年1月29日に発表した「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、組織向けの3位に「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初めて選ばれました。なお、この順位は被害件数の多さではなく、前年の事案などから選んだ候補を、研究者や実務担当者など約250名の選考会が投票して決めたものです。それでも、AIの使い方のルールづくりが組織の課題として注目されていることは読み取れます。

順位と選考方法:IPAプレス発表「情報セキュリティ10大脅威 2026」を決定(2026年1月29日)。

多くの会社では、まずAI利用のガイドラインを作り、PDFや社内ポータルで配布します。これは大切な第一歩です。一方で、配布したガイドラインを実際にAIを使う場面で思い出し、毎回正しく当てはめられるかは、社員一人ひとりの記憶と判断に委ねられます。人によって解釈が分かれたり、新しく入った社員に伝わっていなかったりすることも考えられます。

AGENTS.mdでは、ルールを読む主体が人だけでなくAIエージェントにも広がります。AIが作業を始めるたびに同じファイルを読み込むため、「ルールを知っている人だけが正しく使える」状態から、「誰が頼んでも、AIが同じ前提で作業を始める」状態に近づけられます。

左はPDFのガイドラインから3人に線が伸び、結果がチェック・疑問・バツに分かれる図。右はAGENTS.mdをAIが読み込み、3人とも同じチェックになる図
説明用イメージ(独自作成の図):ルールを人が覚えて当てはめる運用と、AIが毎回同じルールを読み込む運用の違い。

4. 全社共通のAGENTS.mdに何を書くか

全社で共通にしたいことを、短く、確認できる形で書きます。Anthropicは、Claude Code向けの指示ファイルは1ファイルあたり200行未満を目安にし、具体的で簡潔なほど指示が守られやすいと案内しています。OpenAIも、Codexが読み込む指示の合計に既定で32KiBの上限があると説明しています。長い規程をそのまま貼るより、要点を絞るほうが効果的です。

  1. 基本方針

    AIを何のために使うか、最終的な判断と責任は人が持つこと、迷ったときの相談先。

  2. 情報の扱い

    入力してはいけない情報(顧客の個人情報、未公開の契約内容など)と、社内で使ってよい情報の範囲。

  3. 確認の手順

    AIが作った文章・資料・コードを、誰がどこで確認してから外に出すか。出典の示し方や、事実確認の方法。

  4. 会社の言葉と業務知識

    社名・サービス名の正式な表記、よく使う用語の定義、業務でよくある手順。

# 株式会社〇〇 AI活用ルール(全社共通)

## 基本方針
- AIは作業の補助として使い、最終判断と責任は担当者が持つ
- 迷ったときは情報システム担当に相談する

## 情報の扱い
- 顧客の個人情報、未公開の契約内容は入力しない
- 社外秘の資料は、社内で許可されたツールだけで扱う

## 確認の手順
- 社外に出す文書は、担当者と上長の2名で確認する
- 数字・日付・固有名詞は、元の資料と照合する

## 会社の言葉
- 社名は「株式会社〇〇」と正式名称で書く
- 「お客様」に統一し、「顧客様」とは書かない
記述例(架空の会社の例):見出しと箇条書きで、短く確認できる形に書きます。実際の内容は業種や使うツールに合わせて決めます。

例えば、MiToAでは自社サイトの制作にAIエージェントを使っており、コラムのタグの表記、記事末尾の著者紹介の文面、出典の示し方、代表者名の表記などをAGENTS.mdにまとめています。AIが記事を作るたびにこのファイルを参照するため、担当者が替わっても同じ基準で作業を始められます。

5. 定期的に更新して、全社に浸透させる運用

AGENTS.mdは、作って終わりではありません。AIのツールも、社内の業務も変わっていきます。現場で起きたつまずきや良い使い方をルールに戻し、更新を続けることで、AI活用が会社の仕組みとして根づいていきます。

中央のAGENTS.mdを囲んで、現場で使う、気づきを提案、月1回見直す、全社に共有の4つが矢印で循環する図
説明用イメージ(独自作成の図):現場の気づきをルールに戻し、全員のAI利用に反映する更新の循環。

例えば、営業・経理・総務を合わせて20名ほどの会社を想定します。以下は説明のための架空の業務例で、MiToAの顧客事例ではありません。

  1. 管理者を決める

    全社共通のファイルを更新する担当者と、承認する責任者を決めます。部署のファイルは各部署の担当者が持ちます。

  2. 現場から提案を集める

    「この指示を足すとAIの出力が安定した」「この表現は誤解された」といった気づきを、社員が提案できる窓口をつくります。

  3. 月1回見直し、変更履歴を残す

    提案をまとめて反映し、何をなぜ変えたかを記録します。Gitなどの履歴管理を使うと、いつ誰が変えたかを後から確認できます。

  4. 変更を全社に知らせる

    大きな変更は、朝会や社内チャットで短く共有します。新しく入った社員には、研修でファイルの読み方から伝えます。

この運用で、社員がルールを提案し、それがAIの動きとして全員に反映される流れができます。ルールが「上から配られるもの」から「みんなで育てるもの」に変わることが、浸透の鍵になると考えられます。

6. 限界と注意点

AGENTS.mdは「強制力のある設定」ではありません。Anthropicは、Claude Codeが指示ファイルを「強制される設定ではなく、文脈(参考情報)として扱う」と明記しています。特定の操作を必ず禁止したい場合は、権限設定やフック(操作の前に自動で実行される確認処理)など、別の技術的な仕組みを使うよう案内しています。AGENTS.mdは行動の指針、権限設定は確実な制限、と役割を分けて考えます。

AGENTS.mdは行動の指針、権限設定は操作を確実に止める、人の確認は最終判断と責任、という3つの役割を並べた図
説明用イメージ(独自作成の図):AGENTS.md・権限設定・人の確認の役割分担。

また、AGENTS.mdは主にファイルやフォルダーを扱うAIエージェント向けの形式です。ブラウザー上のチャット型AIなど、AGENTS.mdを読み込まないツールでは、各サービスの設定機能に同じ方針を反映するなど、使っているツールに合わせた対応が必要です。対応状況はツールや版によって変わるため、導入時に公式の案内を確認してください。

最後に、AGENTS.mdにはパスワードやAPIキー、顧客の個人情報など、機密情報を書かないでください。ファイルは多くの人やツールが読む前提のものです。

7. よくある質問

Q. AGENTS.mdとは何ですか?

AIエージェントに作業の前提やルールを伝えるための、Markdown形式のテキストファイルです。公式サイトでは「エージェント向けのREADME」と説明され、CodexやClaude Codeなど複数のAIエージェントが読み込みに対応しています。

Q. AIの利用ガイドラインがあれば、AGENTS.mdは不要ですか?

ガイドラインは人が読むための文書で、AGENTS.mdはAIエージェントが作業のたびに読み込むファイルです。ガイドラインの要点をAGENTS.mdに反映すると、社員の記憶に頼らず、AIが同じ前提で作業を始められます。両方を併用し、内容をそろえておくのがおすすめです。

Q. AGENTS.mdに書けば、AIは必ずルールを守りますか?

いいえ。AGENTS.mdは指針として読まれるもので、強制力はありません。必ず止めたい操作は、ツールの権限設定などで技術的に制限し、AIの出力は人が確認する手順と組み合わせます。

8. 参考資料と制作について

  1. AGENTS.md 公式サイト公開日の表示なし/参照日:2026年10月31日。定義、記載例、ネストしたファイルの優先、運営主体、利用プロジェクト数。
  2. OpenAI:Custom instructions with AGENTS.md公開日の表示なし/参照日:2026年10月31日。Codexの読み込み順、近いファイルの優先、合計サイズの上限(既定32KiB)。
  3. Anthropic:How Claude remembers your project(Claude Code Docs)公開日の表示なし/参照日:2026年10月31日。AGENTS.mdの読み込み、指示を文脈として扱うこと、1ファイル200行未満の目安、組織全体の指示と権限設定の使い分け。
  4. IPA:プレス発表「情報セキュリティ10大脅威 2026」を決定公開日:2026年1月29日/参照日:2026年10月31日。組織向け3位と選考方法。

この記事を書いた人

株式会社MiToA(ミトア)

名古屋大学発ベンチャー認定のAIスタートアップ。中小企業を中心に、業務特化型AIエージェントの開発やAI人材育成・内製化支援を展開。「4週間のスモールスタート(MVP開発)」と現場目線の伴走サポートを強みに、IT専門人材が不在の企業でもリスクを抑えたAI活用を実現します。

専門分野:AIエージェント開発 / 業務効率化 / AI人材育成・内製化研修

代表取締役:井上貴雅

公式サイト:株式会社MiToA 公式HP / お問い合わせ・ご相談はこちら

本記事は公開一次資料と、MiToAが自社サイトの制作でAGENTS.mdを運用している実務をもとに、AIによる調査・執筆補助を用いて作成しています。運用例のうち20名ほどの会社の例は説明のための架空の例です。図は独自作成した説明用イメージです。大学による記事の監修・保証を示すものではありません。

情報確認日:2026年10月31日。訂正のご連絡はお問い合わせ窓口へお願いします。

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